ITB療法を受けている患者さんとご家族へ
ポンプやお薬であらわれる副作用には何がある?
監修:横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 根本明宜 先生
- ITB療法ってどんな治療?
ポンプやお薬であらわれる
副作用には何がある?- 日常生活で注意することは?
- 治療中に受けられる公的サービスは?
この治療法では、下記のほか、予期しない副作用が起こる可能性がありますので、痙縮の急激な変化や、異常な症状の出現、身体の変化については、ご自分で判断せずに、直ちに主治医あるいは病院の相談窓口にお知らせください。特に異常な症状や離脱症状があらわれた場合、あるいはポンプのアラーム音が鳴った場合は、直ちに病院に連絡し、主治医の指示にしたがって受診してください。ポンプの使用中に重大な副作用があらわれた場合には、直ちに適切な処置が必要です。
ポンプからアラーム音が聞こえたとき
アラーム音が鳴るのは、①ポンプ内のお薬がもうすぐなくなるとき注)、②ポンプの電池がもうすぐ切れるときです。ポンプからアラーム音(ピーポーピーポーピーポー、またはピーという小さな音が鳴ります)が聞こえた場合は、直ちに病院に連絡し、主治医の指示にしたがって受診してください。
注)アラーム音が聞こえてからポンプにお薬を補充するのではありません。お薬補充のための受診日は、アラーム音が鳴る前に予定されています。
アラーム音①
ピーポーピーポーという音が鳴ります。
アラーム音②
ピーという音が鳴ります。
ポンプシステムの異常による危険性(副作用)
治療中に、何らかの原因でポンプからのお薬の注入が突然止まったり、逆に大量に注入されてしまうと、体に異常な症状があらわれます。病院で適切な処置を行わなかった場合には、生命をおびやかす状態へと発展する危険性がありますので、患者さん、あるいはご家族、介護者の方は、以下の事項に十分ご注意いただき、下記の離脱症状(りだつしょうじょう)、過量(かりょう)投与の初期症状があらわれた場合には直ちに主治医に連絡し、受診してください。
離脱症状とその対応
治療中、ポンプからのお薬の注入が突然止まってしまったり必要量が注入されなくなると、お薬の効果が感じられなくなり、痙縮(けいしゅく)が悪化してしまいます。さらにはかゆみ、血圧低下、感覚の異常、高熱、精神状態の変化(幻覚、錯乱、興奮状態など)、けいれん発作(痙縮の増強)などの離脱症状があらわれます。
離脱症状の初期症状
- お薬の効果がなくなり、痙縮の症状が悪化してきた(筋肉が治療前のように固くなる、けいれん発作が出る など)
- 風邪でもないのに、突然高熱が出てきた
- かゆみを感じる、しびれる、チクチクする、ピリピリする、など今までになかったことを感じる(感覚の異常)
- 精神状態の変化(落ちつかない、イライラする)を感じる
離脱症状を防止するための注意
お薬の注入が突然止まらないように、以下のことを守ってください。
- 主治医に指定された受診日に、必ず受診する
- ポンプのアラーム音が鳴った場合は、直ちに受診する
- 日常的に繰り返す特異な動作や激しい運動は避ける
お薬の注入が止まってしまう主な原因としては、カテーテルの不具合(特にポンプ接続部分の外れなど)、ポンプ内のお薬がほとんどなくなってしまう、ポンプの電池切れによりポンプが停止してしまう、などがあります。
過量投与とその対応
治療中、ポンプからお薬が過剰に投与されると、非常に眠くなり、意識がもうろうとし、呼吸が弱くなるなどの症状があらわれます。この場合には、至急、お薬の注入を止める必要があります。
過量投与時の初期症状
- 非常に眠くなり、夜でもないのに眠ってしまう
- 意識がもうろうとする、反応がなくなる
- 呼吸が弱くなる、脈が少なくなる、体温が下がる
- ふらふらする、起き上がる元気がなくなる(血圧低下)
- 全身の筋肉がやわらかくなり、ぐったりする
- けいれんを起こしたり、精神状態の異常が出る(幻覚、錯乱など)
過量投与を防止するための注意
過量投与による症状は、お薬補充の後すぐに症状があらわれることが多いため、お薬の補充後は、特に上記の症状に注意してください。
お薬(バクロフェン)による副作用(ポンプシステムは正常に機能している場合)
お薬による副作用として、離脱症候群、傾眠、便秘、悪心、嘔吐、筋痙縮、尿閉、発熱などがあらわれることがあります。これらの症状が強く認められた場合には、直ちに主治医に連絡し、受診してください。
ポンプ、カテーテルによる副作用
ポンプ、カテーテルの植え込み部位に感染症が発生することがあります。この場合は手術の傷口が痛む、赤くなる、腫れる、などの異常があらわれます。また、ポンプやカテーテルが植え込んだ位置からずれたり、体液が術部にたまってしまう漿液腫(しょうえきしゅ)や、髄液のもれなどが起こることがあります。これらの症状があらわれた場合には、直ちに主治医に連絡し、受診してください。
その他の注意(耐薬性:たいやくせい)
治療中にお薬の効果が弱くなり、増量しても効かなくなる場合があります(これを耐薬性といいます)。耐薬性が生じた場合には、いったんお薬の量を減らしてしばらく休薬する必要がありますので、お薬の効果を上げるために増量しても効果が感じられない場合は、受診してください。