- 1)WHO. Rehabilitation.
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/rehabilitation [2025年1月時点] - 2)日本医療・病院管理学会. リハビリテーション.
https://www.jsha.gr.jp/glossary-keyterm/r6/rehabilitation/ [2025年1月時点] - 3)正門由久, 臨床神経学雑誌, 2013, 53(11), 1261-1263
- 4)笠原隆, 正門由久, Jpn J Rehabil Med, 2018, 55(6), 448-452
- 5)厚生労働省. 【テーマ3】リハビリテーション 参考資料, 意見交換 資料-1参考 29.4.19
- 6)上田敏ほか監修, 佐伯覚ほか編, 標準リハビリテーション医学. 第4版, 東京, 医学書院, p22-24, 2023
- 7)井林雪郎, 神経治療, 2019, 36(2), 78–84
- 8)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会編集. 脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023). 東京, 協和企画, p260-262, 2023
- 9)神奈川リハビリテーション病院 脊髄損傷リハビリテーションマニュアル編集委員会編集. 脊髄損傷リハビリテーションマニュアル. 第3版, 東京, 医学書院, p17-23, 66-71, 79-83, 300, 2019
- 10)日本リハビリテーション医学会. 脳卒中のリハビリテーション. 2014年4月改訂
https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_01.html [2025年1月時点] - 11)日本リハビリテーション医学会. 脊髄損傷のリハビリテーション. 2014年4月改訂
https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_03.html [2025年1月時点] - 12)宮井一郎, 神経治療, 2023, 40(3), 328–333
- 13)難病情報センター. 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)(指定難病18).
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4880 [2025年1月時点]
痙縮のリハビリ
テーション療法の流れ
監修:横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 根本明宜 先生
リハビリテーション療法とは
リハビリテーション療法とは、できる限り自立をして、有意義な人生を送れるようにするための治療・支援です1)。
リハビリテーション療法と聞くと機能の回復が最初に思い浮かびますが、それだけではありません。家庭や社会の中で生き生きと生活できるように手助けする治療・支援も、リハビリテーション療法の一部です1,2)。
痙縮治療としてのリハビリテーション療法
リハビリテーション療法は痙縮(けいしゅく)の治療の一つとして欠かせません。
リハビリテーション療法を含めた痙縮治療の目的は、過剰な筋活動を抑制して、筋肉が短くなることを防いだり、関節の動きが悪くなる・固くなる「拘縮(こうしゅく)」という状態になるのを予防・軽減したりすることです3,4)。つまり、リハビリテーション療法などを行うことで、関節の可動域を広げることを目指します。
リハビリテーション療法は、患者さんやご家族と医療スタッフが一緒に目標設定を行います5,6)。
痙縮に関係する目標としては、関節をできる限り動かせるようにして、自立した生活を送れるようにすることなどが挙げられます。
痙縮に関係するリハビリテーション療法の目標の例
- 手指が固まったままで開きにくい
ものを落としたりこぼしたりせずに、つかめるようにする - ひじが曲がって伸ばしにくい
服の脱ぎ着を、一人でもできるようにする - 脚がつっぱって痛い
歩き方をスムーズにする/自分だけで歩けるようにする
急性期の痙縮のリハビリテーション療法
脳卒中
- できる限り早くベッドから離れ、運動などのリハビリテーション療法を始めます7-9)。
- 脳卒中を発症してから約1~3週間程度で行われるリハビリテーション療法を指します7)。できるだけ早くリハビリテーション療法を始めて、自分の身の回りのことができるようにしていきます7,8,10)。
脊髄損傷
- できる限り早くベッドから離れ、運動などのリハビリテーション療法を始めます7-9)。
- 脊髄を安静にしておかなければならないケースは、早くベッドから離れて運動することが困難です9,11)。ただ、可能な限り早期のリハビリテーション療法を開始することが望ましいとされています9)。寝ている体位を頻繁に変える、呼吸の訓練、関節が固まらないようにするための関節可動域訓練などを行います11)。
回復期の痙縮のリハビリテーション療法
脳卒中
- 回復期リハビリテーション病棟(病院)などに移ってから数ヵ月~最長6ヵ月までに行われるリハビリテーション療法です7)。
- できるだけ早く始めることは急性期と一緒です。最大限の回復を目指して、訓練時間をしっかり確保すること、軽い歩行障害のある患者さんであれば有酸素運動や筋力増強が勧められています8,10)。
維持期・生活期の痙縮のリハビリテーション療法
脳卒中
- 脳卒中での維持期・生活期は回復期リハビリテーション病棟(病院)の退院後を指し7)、回復期までに獲得した機能をできるだけ長く維持するために行われます10)。例えば、歩行機能の改善や日常生活での動きをよくするための歩行訓練や下肢筋力増強訓練などがあります8)。
脊髄損傷
- ここでは、急性期を過ぎ、全身状態が安定した時点からのリハビリテーション療法を紹介します。
- 脊髄損傷では比較的早期に将来の後遺症が決まる場合が多いため、より具体的な対応を障害ごとに考えて実践していきます。例えば、対麻痺(ついまひ、左右の足の麻痺)がある患者さんでは、麻痺のない上肢に今後必要になる能力は、生活の中で自分の身体を持ち上げることになってきますから、そのための筋力トレーニングを重視してリハビリテーション療法の計画を組み立てていきます11)。
神経変性疾患
- 神経変性疾患の1つである脊髄小脳変性症や多系統萎縮症は運動失調をきたす疾患で、急性期・維持期という分け方はあまりなされないため、ここでは一般的なリハビリテーション療法の効果を紹介します。
- 総じて、協調運動、バランス、歩行などの練習を組み合わせて短期集中的なハビリテーション療法を行うと、運動失調などに改善効果がみられるとされています12,13)。また、リハビリテーション療法の効果は、終了後もしばらく持続します13)。多くの場合、個々の患者さんに合わせたリハビリテーションメニューを作成していきます13)。