脊髄損傷の後遺症による
「痙縮の症状」とは?
監修:横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 根本明宜 先生
痙縮(けいしゅく)の症状とは?
脊髄損傷では「体が反り返る」「脚が上に上がる」「脚が伸びる」などの痙縮の症状があらわれることがあります。
痙縮とは「筋肉を縮める命令」と「緩める命令」のバランスが崩れて、自分の意思とは無関係に「筋肉が縮んでしまう状態」とされています。脊髄損傷では、左右の脚が麻痺する「対麻痺(ついまひ)」、または左右の手足が麻痺する「四肢麻痺(ししまひ)」になることがほとんどです。
痙縮の症状は、対麻痺では、体が反り返る、脚が上がる、脚が伸びるなどの症状があらわれます。四肢麻痺では、対麻痺の症状に加えて、手指が握ったままとなり開きにくい、ひじが曲がるなどの症状があらわれます。定期的に受診して、適切な医療を受けることが大切です。
対麻痺両下肢の痙縮、筋肉の緊張が強くなって困ること
患者さんが困ること
- 車いすで安定した姿勢を保てない
- 体幹が締め付けられて痛い
- 車いすやベッドへの移乗が困難
介護者が困ること
- 車いすやベッドへの移乗が困難
- 痛がり、リハビリをしにくい
四肢麻痺全身の痙縮、筋肉の緊張が強く介護で困ること
介護者が困ること
- 身体が硬直していて着替えがしにくい
- 入浴介助に気をつかう
- 車いすからの転倒・転落に気をつかう
- 痛がる表情をみせリハビリに気をつかう
- ベッドへの移乗が困難
- 呼吸が苦しそう
- 褥瘡ができやすい
体が反り返る
体が勝手に反り返ることで、車いすからの転倒、リハビリに支障をきたすなど、日常生活に支障をきたすことがあります。

脚が上に上がる
脚が勝手に上がることで、車いすで安定した姿勢を保てない、自動車の運転に支障をきたすなど、日常生活に支障をきたすことがあります。

脚が前に伸びる
脚が勝手に伸びることで、車いすで安定した姿勢を保てない、車いすやベッドへの移乗が難しいなど、日常生活に支障をきたすことがあります。

悪化するとどうなるの?
痙縮を長い間放っておくと、筋肉が固まり、関節の動く範囲が狭くなり、動かせなくなる「拘縮」が起こります。
痙縮の症状を長期間そのままの状態にしておくと、筋肉が固まって関節の動きが制限される「拘縮」という症状を招いてしまう可能性があります。
脊髄損傷により拘縮になると、筋肉が固まるため足の関節が曲がった状態で固定されて動かせなくなります。さらに、体の柔軟性も低下するため、座ったり、起き上がったり、移乗したりするのが難しくなります。
拘縮が起こる前に適切な治療を行うことが大切です。体が反り返る、ひざが勝手に上に上がる、脚が勝手に前に伸びたりなどの症状に気づいたら、専門の医療機関を受診しましょう。