1. 総合HOME
  2. おとなTOP
  3. 脳卒中の後遺症による「痙縮の症状」とは?

脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)の後遺症による
「痙縮の症状」とは?

監修:横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 根本明宜 先生

痙縮(けいしゅく)の症状とは?

脳卒中では、麻痺があらわれた側に「ひじが固くなって腕が伸びない」、 「手首や指が曲がったまま広げられない」 、「足の指先が足の裏側に曲がる」などの痙縮の症状があらわれることがあります。

痙縮とは「筋肉を縮める命令」と「緩める命令」のバランスが崩れて、自分の意思とは無関係に「筋肉が縮んでしまう状態」とされています。脳梗塞、脳出血をはじめとする「脳卒中」では、右側または左側の片方の体が麻痺する「片麻痺(かたまひ)」になることがほとんどで、痙縮の症状は麻痺があらわれた側の手足にあらわれます。

痙縮の症状は、上肢(肩、腕、手首)や下肢(股関節、ひざ、かかと、つま先)など、さまざまな部位にあらわれます1)。痙縮は、症状のあらわれる部位や、症状の強さが時間と共に変化することがあります1) 。定期的に受診して、適切な医療を受けることが大切です。

脳卒中の麻痺は体の片側に多い。
痙縮の症状は、
麻痺のある手足にあらわれる。

手・腕・肩の痙縮の症状

ひじや肩がかたくなって着替えがしにくい、指が食い込んで爪が切りにくい、しびれや痛みがあるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。

イメージ図:肩が上がってしまう、ひじがかたくなって腕が伸びない、手首や指が曲がったままひろげられない

患者さんが困ること

手首や手の指

  • 爪を切れない
  • 爪が手のひらに食い込んで痛い
  • 手が洗えない
  • 食事のときに手を添えにくい
  • しびれや痛みがある

ひじ

  • 腕を伸ばせない
  • 着替えがしにくい
  • しびれや痛みがある

  • 肩が上がらない
  • 着替えがしにくい
  • しびれや痛みがある

介護者が困ること

  • 手のひらを清潔に保てない
  • 爪を切れない
  • 着替えを手伝うのが困難
  • リハビリで痛がる

脚の痙縮の症状

足の指先が裏側に曲がることで、つま先が引っ掛かりつまずきやすくなるなど、歩行に支障をきたすことがあります。

イメージ図:足のつま先が足の裏側に曲がる

患者さんが困ること

ひざ

  • 歩きにくい
    (長く歩いていられない、早く歩けない)
  • 歩行訓練がしにくい

かかと

  • かかとが地面につかないので、歩いていても不安定
  • 装具や靴が履きにくい

つま先

  • つま先が痛い
  • つま先が引っ掛かり、つまずきやすい
  • 地面とすれて、つま先の靴底の減りが早い

介護者が困ること

  • 装具や靴を履かせるのが困難
  • 転倒しやすく、つきっきりになってしまう
  • 歩行訓練がしにくい
  • 立ち上がりの動作が行いにくい

悪化するとどうなるの?

痙縮を長い間放っておくと、筋肉が固まり、関節の動く範囲が狭くなり、動かせなくなる「拘縮(こうしゅく)」が起こります。

痙縮の症状を長期間そのままの状態にしておくと、筋肉が固まって関節の動きが制限される「拘縮」という症状を招いてしまう可能性があります。

拘縮が起こる前に適切な治療を行うことが大切です。手足のつっぱりの症状や勝手に動いてしまうなどの症状に気付いたら、専門の医療機関を受診することが重要です。

  1. 1)Katoozian L, et al, J Natl Med Assoc, 2018, 110(6), 547-552
  2. 2)Kwah LK, et al, J Physiother, 2012, 58(1), 41-47